雨の日曜日

宛先もわからないまま

声を聴かせて

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エンドロールで聞こえた声を、あのとき込み上げた感情を、わたしはきっと、忘れない。

それまでスクリーンに映っていた物語は、楽しくて笑いが零れるような内容だったのに、エンドロールでその曲が聞こえてきた瞬間、涙が滲んで、胸が締め付けられるように切ない感情が込み上げた。いまはとても幸せだけれど、こんな未来がくるだなんてちっとも考えられなくて、ただただ苦しいだけの思いがあった。消化しようにもしきれず、胸にぽっかり穴が空いたような、それでいて、いつも何かが閊えているような。自分自身の感情なのにどうにも持て余して、どうすればこの状態から抜けられるのか、楽になれるのか。そんなことばかり考えて、ベッドの中で声を殺して泣いた。そんな夜が、あった。

少し掠れた、けれど高く通る綺麗な歌声が、宙ぶらりんのままでいた感情の置き場所を、教えてくれたような気がした。あの頃の自分に宛てた歌だと、思った。決してきれいな感情だけではなかった。独占欲、自己防衛、責任転嫁。最低だったと、思う。だけど、そんな日々をあの声が、許してくれた。

言葉はいつも感情に追いつかない。自分の持ちうる言葉の限りを尽くして、どんな言葉を選んでも、重ねても、そこにはどうしても隙間ができてしまう。だけど、もしかしたら。音楽がその隙間を埋めることは、あるのかもしれない。

きっとずっと、忘れない。わたしだけの特別な歌。声。どうかいつまでも、聴かせていて。