雨の日曜日

宛先もわからないまま

あなたと、同じ理由で泣きたいの

深海で眠りたい。

心に負荷がかかっているときの休み方、これまで学んできたつもりでいたけれど、全然下手なままだった。
ひとりじゃどうしようもないのに、たったひとりになりたくて、耳も目もすべてを閉じて自分だけを抱えて息を止めていたい。そんな気分。

交差点ではたくさんの人が行き交っている。この街は夜でも明るく、忙しい。
こんなにたくさんの人がいるのに、どうしようもなく孤独で、普段はその状態を愛してさえいるくせに、どうにも耐えられない日がくる。
誰かたすけて、と思うのに、声にすることもできない。
落ち着け、大丈夫、大丈夫。
瞼を閉じて、穏やかな波打ち際を歩く姿をイメージする。
足元の砂を波がさらっていく。
普段は心地よいはずのその曖昧さが、私を不安にさせた。

 

こんな薄っぺらい証拠なんていらない、と無理やり消した11桁の数字、下4桁をどうにも思い出せなくなってしまった。
そのことに気づいた途端に視界が揺れて、次の瞬間には立ち上がれなくなっていた。
本当にもう他人なのだと思い知らされて、消したのも、忘れたのも自分のくせに、
幸せなはずの1LDKで、たった一人子どものように声をあげて泣いた。
わたしを掬いあげてくれる優しい声は、もう二度と聴けない。

 

誰か、なんていない。
いつだって私が欲しいと思う優しさは、彼の形をしている。

 

深海に潜って音すら聞こえない世界で、どれだけ海が穏やかにしてくれたとしても、このまま涙と一緒に溶けてしまいたいと願ったとしても、私の髪は皮膚は体温は、海と交わることはない。
それがどれだけ悲しいことか、きっと一生本当の意味で理解されることなんてない。
私だけの孤独。
どこにも行けやしない。
海にも、ましてや他の誰かになることもできず、私は私の輪郭を象ったまま、この身体を持て余したまま。

 

 

ソファに寝転び天井を見上げると、電球が切れていることに気が付いた。
小さな電球がいくつも並ぶこの部屋では、一つくらい切れていても気付かないし、困ることはまずない。
それでも、きちんと付け替えてから明かりをつけると、結構暗かったのだなと思う。

この天井と同じなの。
電球がひとつ、ずっと切れたまま。なくてもなかなか気付かないし困らないけれど、ずっと満たされなくて寂しいの。そういう寂しさ、あなたにはわからないでしょう。
そう零すと、じゃあ付け替えておくよ、と声だけの返事があった。続けて、キーボードを叩く音。
ブルーライトを見つめる瞳はこちらを向かない。
ただの日常がそこにはあった。

 


膝を抱えた広いベットの上で、できるだけ深く、と目を瞑った。
遠くで、くぐもった波の音が聞こえる。