雨の日曜日

宛先もわからないまま

季節外れの部屋

雨の予報も外れて、約束の紫陽花は、気のはやい花びらたちが競うように咲いている。

 変わっていくことばかり、早歩きの駅前。かけあしの改札口。目がまわる毎日のなかで、季節だけが永遠だ。夏がくるたび、白いTシャツに袖を通している。

 突然の予定変更も、歩き疲れたスニーカーも、思い出せない歌詞もはなうたも。全部わらいあっているこの時間が、くりかえす季節になればいい。はじまっては終わっていく夏が永遠だなんて、なんだか笑っちゃうね。清涼飲料水を握りしめるポスターの彼女も、眩しいくらいに笑ってる。だけど、それでも。わたしは、永遠になりたい。

 窓の外のさくらの木。春には主役の彼も、いまは静かに紫陽花をみている。

 声をころして泣いた夜。優しい朝。何度もカレンダーをめくって、かわらないと誓えるものができたなんて、なんて思い違い。先のことなんて、誰にもわからないね。だけど。

 くりかえす永遠の夏を、季節外れのこの部屋だけが知っている。