雨の日曜日

宛先もわからないまま

君に射す光

一夜明けて、わたしには昨日と同じように当たり前に朝がやってきた。歯を磨いて食事をして、身支度を整え電車に乗り込む。いつも通りの街が、窓の外を流れていく。

もう、推し量ることしかできない。原因やきっかけになり得ることなんてそこら中に転がっていて、だけど本当は、そんなものすらなかったのかも知れない。誰にも、何もわからない。こうして何の関わりもないわたしがこんなところで話題にすることすら、誰かの思いを傷つける行為なのかも知れません。いろんな思いが交錯していて、うまく身動きが取れないでいる。

いつだって優しい言葉や出来事よりも、そうでない方が積もっていきやすいのは、どうしてなのだろう。大切なものは、目に見えない。消費されていくニュース、流れ行く街並み。夜は更けて、また朝がやってくる。

昨日まで存在していたひとが、今この瞬間、世界のどこにもいないという事実。こんなにも心が揺さぶられるなんて、思ってもみなかった。深く暗い穴の底を覗いているような、体の内側から沸き起こる恐怖感。

わたしたちは、勝てないのだろうか。鋭く尖った悪意に。降りかかる心ない言葉の濁流に。わたしたちはいつか誰かの、あなたの、光にはなりえないのでしょうか。

素敵な出来事も、楽しい思い出もきっとあるはずなのに、あったはずなのに、深く沈んでしまったときには、すきなもの、尊いと感じた記憶、大切なひと、美しい景色、優しい言葉、そういった一切のものは、わたしたちに手を差し伸べてはくれないのでしょうか。守っては、くれないのですか。どんなに強く思っていても、わたしたちは、勝てませんか。

いつも通りの今日を送って、帰路に着く。道の途中、ふと目に入った花壇では同じ色の鮮やかな花が、いくつも並んで咲いていた。等間隔に並んだ花たちは整然としていて綺麗だ。この季節にしては涼しい風が吹いて、花たちが花壇の中で一斉に同じ方向に揺れる。吐き気がした。